2026年9月23日
なぜ ヘモグロビン が低いと氷を食べたくなるのか(氷食症の医学的背景)
当院には健康診断で貧血を指摘された患者さんが来院されることが多いです。貧血というものはしばしばふらつきや倦怠感の症状をいう方も多いですが、医学的にはヘモグロビン【Hb】が低いことを貧血といいます。とくに女性の方は月経過多などにより貧血を呈する患者さんは多く、その場合には血液中の鉄不足を生じていることが多いです。ポイントとして、氷を食べたくなる理由は「鉄欠乏で脳が酸欠になり、氷をかむことで一時的に脳血流が増えるから」。 この現象は医学的に 氷食症(pagophagia) と呼ばれ、鉄欠乏性貧血の代表的な症状です。 氷食症は無性に氷を食べたくなることが主な症状です。とにかく氷を食べずにいられず、止められなくなります。 目安の一つとして、「1日に製氷皿1皿分以上の氷を、2ヵ月以上にわたって毎日食べ続けている」という状態が氷食症の一応の基準として挙げられています。
その他にも、氷を食べることで安心感や不安軽減に繋がることもあります。
❄️ 氷を食べたくなるのは“体からのサイン”
「最近、氷ばかり食べてしまうんです」 外来でこう話す患者さんは、実は 高い確率で鉄欠乏性貧血 を抱えています。
氷食症は鉄欠乏の特異度が高く、 鉄欠乏患者の 16〜56% にみられる一方、健常者では約 4% とまれです。
🧠 氷をかむと脳がシャキッとする理由
● 最有力説:脳血流が一時的に増える
鉄欠乏で Hb が低下すると、脳が慢性的な酸素不足になります。 その状態で氷をかむと、冷刺激が三叉神経を介して血管反応を起こし、 脳への血流が一時的に増えることが研究で示されています。
その結果、
- 集中力が上がる
- ぼーっとする感じが軽くなる
- 眠気が減る
こうした「即効性のある改善感」が得られるため、氷を求める行動が習慣化しやすくなります。
👄 口の不快感を和らげるためという説もある
鉄欠乏では舌炎・口角炎が起こりやすく、 氷の冷たさがその痛みを一時的に緩和するため、氷を食べるという説もあります。
ただし、口の症状がない人でも氷食症は起こるため、補助的な説明にとどまります。
🔄 鉄剤治療で氷への欲求は消える
氷食症は鉄欠乏そのものに由来するため、 鉄剤治療を始めると 1〜2 週間で氷への強い欲求がほぼ消失します。
これは氷食症が「行動の問題」ではなく、 体が鉄不足を補うために起こしている生理的反応であることを示しています。
🩺 氷を食べたくなる人にみられやすい症状
- 疲れやすい
- 動悸・息切れ
- 集中力低下
- 爪の変形(スプーン爪)
- まぶたの裏が白い
これらが複数ある場合、鉄欠乏性貧血の可能性が高まります。
鉄が欠乏すると造血機能が低下し、結果ヘモグロビンが低値となります。単なる鉄欠乏の場合には経口で鉄を補充する(内服薬、食事、サプリメントなど)と改善します。注意しなければならないことは消化管出血により無自覚にヘモグロビンが低下する場合があります。この際は上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)や場合により下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)を行う必要があります。癌や潰瘍があった場合にはこのような事態が起こりえますので注意が必要です。