肛門外科
肛門外科
※当院の疾患対象年齢は16歳以上です
肛門外科は、肛門疾患全般を取り扱う診療科です。日本人の3人に1人が痔で悩んでいるといわれるほど、私たちにとって、おしりの病気は身近なものです。その病態は様々で三大肛門疾患といわれる痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)をはじめ、肛門周囲膿瘍、肛門周囲炎、膿皮症、肛門ポリープ、便秘症、便失禁、直腸脱、尖圭コンジローマなど、数多くの疾患が存在します。
当然、それぞれにおいて治療法は異なりますが、痔のなかで最も多い痔核では、以前は大きく切り取る結紮切除法が行われてきましたが、現在は「切らずに治す治療:注射による硬化療法」が主流です。切除法と注射の組み合わせなど個々の患者様や病態に応じたオーダーメードの治療が選択できるようにもなっています。
肛門疾患は、男女と問わず受診に抵抗がある方も多いかと思いますが、そのまま放置してしまうと症状の悪化をまねくだけでなく、他の病気の発見が遅れてしまう可能性もあります。専門外の内科医が直腸診も行わずに「痔だとおもうので薬をだしましたから様子をみましょう」という対応でがんに気が付かれなかったというのを何人もみてきました。当院では日頃から患者様の恥ずかしいという気持ちを汲み取りながら診療を行っています。痔やおしりの症状でお困りの方は、一人で悩まずにぜひご相談ください。
痔や肛門疾患は、放置しておくと悪化したり切除手術が必要になったりすることが多い病気です。
異変を感じた段階で、早めに受診して治療をはじめましょう。
肛門や排便にまつわる症状は様々です。まずは診察をうけてください。最も簡単な検査は直腸診と肛門鏡による診察です。進行直腸がんなどが触知できる範囲に存在した場合、診断は比較的容易です。「お尻をみせる」ということに対して羞恥心があり適正な診察が行われないと病気の発見が遅れることがあります。実際の診察は下着を程度までおろし、タオルをかけて体を横にする「側臥位」という状態で診察を行います。
診察の介助には女性看護師が対応するため、ご安心ください。
直腸診と肛門鏡で診察できる範囲は限られています。ここよりも奥に病変が存在する可能性があるため、過去数年の範囲内で大腸カメラを行っていない方には大腸カメラ検査をおすすめします。また、痔核の治療(手術)希望の患者様には術前検査として大腸カメラをうけていただきます。これは痔の治療のみを行ったが症状が改善せず、結腸にがんが存在していたというケースがあるためです。
内痔核(肛門の内側の痔)に対する症状に対しては局所麻酔下での内痔核硬化療法をおすすめします。外痔核(肛門の外にある痔核)の広範切除をともなう症例や、痔瘻に対しての手術は腰椎麻酔やブロック注射が必要なため当院では対応できません。状況に応じて専門施設への紹介をさせていただきます。
便秘や下痢などによって長年にわたり、肛門周辺の毛細血管が拡張して静脈瘤となり、また肛門周囲の組織が弛んで膨らんで「いぼ痔」となることがあります。内痔核は直腸側に発生し、外痔核は肛門側に発生します。内痔核は通常痛みを伴いませんが、外痔核は痛みを伴います。内痔核硬化療法(ALTA療法)は、痛みのない内痔核に対する治療法として利用されます。
内痔核硬化療法(ALTA療法)は、痔核に薬剤を注射して、血液の流れを減少させることで痔核を硬化させ、その大きさを小さくする治療法です。従来の手術法であるメスによる切除手術に比べて、この治療法は体や日常生活への負担が少ないという特徴があります。また、手術によって排便を止める必要がなく、手術後の排便にも痛みが少ないため、翌日から通常通りの排便が可能です。痔核切除後の合併症である術後出血もほとんどみられません。
ただし、この方法はすべての痔症状に適用できるわけではありません。内痔核硬化療法は、主に肛門の内側に発生するイボ痔である内痔核に適用されます。また、薬剤にアルミニウムが含まれており、人工透析を行っているや腎機能障害のある患者様、妊婦や授乳中の女性に対しては適用されません。
内痔核硬化(ALTA)療法は、以下の流れで行います。
診察と評価
症状や状態を評価します。内痔核硬化療法が適切かどうかを判断します。これには、肛門の検査や必要な検査が行われる場合があります。
準備と説明
治療前に、治療の詳細やリスク、予想される効果などを説明します。
治療前日の眠前に下剤を服用していただき、当日朝に浣腸をして排便を促します。
局所麻酔の施行
治療当日、点滴を行います。血圧などをモニタリングしながら局所麻酔が施行されます。これにより、治療の際に痛みを最小限に抑えることができます。
薬剤の注入
麻酔が効いた後、医師が特定の薬剤(通常はアルミニウム含有製剤)を痔核周囲に注射します。この薬剤で痔核の血管を収縮させ、痔核を硬化し処置します。
当日は回復室にて休憩をとっていただき、問題がなければ帰宅となります。術当日は自宅で安静にしていただき、アルコール摂取や入浴などは控えてください。
経過観察と治療成績の評価
手術後の翌日に必ず再診してください。
治療後、患者様は一定期間を経て経過観察されます。通常は数週間から数か月です。この期間中に症状の改善や治療効果を評価します。
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