日帰り大腸ポリープ切除
日帰り大腸ポリープ切除
※当院の疾患対象年齢は16歳以上です
消化管は管腔構造をしています。管腔の内側表面は粘膜で覆われており、この粘膜層の一部が隆起してできたものを大腸ポリープといいます。多くは隆起しますが、平坦なものやキノコのように茎を持ったものなど形状は様々です。構造や組織により、腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分けられ、専門的にはさらに細かく分類されています。
腫瘍性ポリープは、良性の大腸腺腫と悪性の大腸がんがあり、非腫瘍性ポリープは、過形成性ポリープ、炎症性ポリープ、過誤腫性ポリープに分類されます。非腫瘍性ポリープは加齢や炎症によるもので、大きいものを除いては治療を必要としないことが多いですが、腫瘍性ポリープは良性の腺腫から時間をかけてがん化する可能性があるため注意が必要です。
大腸がんは、最初から正常粘膜にがんが発生するパターンと、前述のように良性の腫瘍性ポリープ(大腸腺腫)が悪性化してがんになるパターンがあります。多くは後者によるもので、サイズが大きくなるほどがん化率が高まると考えられています。そのため発がんリスクのある大腸腺腫を良性の時点で早めに切除することが大腸がんの予防につながります。
大腸ポリープが小さい場合や平坦な場合には、自覚症状を伴うことはほとんどありません。ある程度大きくなると、便潜血検査陽性で発見されたり、さらに増大すると症状を伴うこともあります。
大腸ポリープができる原因は、主に遺伝子の異常と考えられています。また、大腸がんの発生リスクを高める最大の危険因子は、年齢(50歳以上)および家族歴(家族に大腸がんに罹った人がいる)です。高脂肪食や高カロリーな食事、肥満、過量の飲酒、喫煙、保存・加工肉の摂り過ぎなど生活関連因子などもあります。
また、がんの発症から進行がんに至る過程により増減する腸内細菌の種類が大きく異なることも判明していたり、最近ではヘリコバクター・ピロリ菌との関連を報告する論文もあります。こうした要因が特定の遺伝子に変化を起こすことでポリープを発症し、がんになると考えられています。
大腸がんの家族歴がある場合、そうでない人に比べて2~3倍大腸がんの罹患率が高くなるともいわれています。親兄弟などの血縁者に大腸ポリープや大腸がんを患った人がいる方や40歳を過ぎた方には、定期的な大腸内視鏡検査が推奨されています。また、家族性腺腫性ポリポーシスと呼ばれる遺伝性のポリープもあります。無数のポリープが大腸にできる病気で、幼いころからポリープができ始め、年齢とともにがん化する確率が高くなります。治療せずに放置すると、60歳ごろには、ほぼ100%大腸がんになるといわれています。
大腸ポリープの検査には、便潜血検査、注腸造影検査、大腸内視鏡検査があります。便潜血検査は、健康診断などで大腸がんを見つけるための拾い上げ検査(スクリーニング検査)として広く普及しています。
便に血液が混じっているかどうかを調べる検査で、自覚症状のない大腸がんを見つけるのに役立ちます。2日間の便を調べ、そのうち1日でも陽性であれば、精密検査として大腸内視鏡検査を行います。便潜血検査により、進行がんを90%以上、早期がんを約50%見つけることができるといわれています。
大腸内視鏡検査ではモニターを通じて直接粘膜の細かな状態を観察でき、ポリープの大きさや色、表面構造などを正確に把握することができます。検査と同時にポリープを切除できる点も大きなメリットです。注腸造影検査は、大腸に造影剤(おもにバリウム)と空気を注入してX線撮影を行い、ポリープの形や大きさ位置などを診断します。大腸の全体的な像が得られることが特徴ですが、病変が認められた場合はやはり大腸内視鏡検査を行うように勧められます。
※当院の大腸内視鏡検査について、詳しくは「下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ/大腸内視鏡検査)」をご覧ください。
大腸ポリープが発見された場合、放置してよい「非腫瘍性」なのか、あるいはがんを含む「腺腫性」なのかを確認します。内視鏡治療の適応となるポリープは、一般的には「径6ミリ以上の腺腫性ポリープ」と「リンパ節転移の可能性がほとんどなく内視鏡を用いて一括で切除できるがん」です。
ただし、径5ミリ以下の良性ポリープでも、平坦あるいはへこんだ形のもの、がんとの区別が難しいものは適応となります。
がんやポリープを切除する内視鏡の術式にはいくつかの種類があります。代表的なものは「ポリペクトミー」、「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」、「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」といわれるもので、これらは病変の形や大きさに応じて使い分けられます。
キノコのように茎があるタイプのポリープに用いられます。茎の部分にスネアという金属性の輪をかけて締め付け、そこに高周波電流を流して切除します。電流を使用した際に問題となるのが出血と穿孔(腸に穴があくこと)です。
茎のあるものは太い血管が走行していることが多く、電流で焼灼しながら止血を行い、留置スネアとよばれる止血具や、止血クリップを使用することがあります。
最近ではキノコのような有茎性でないポリープに対してはスネアに高周波電流を流さないで直接切除するコールド・ポリペクトミーを行うことが多くなっています。この方法では出血や穿孔のリスクが減少するといわれています。
平坦な状態で発生しているタイプのポリープに用いられます。粘膜の下に生理食塩水などの薬液を注入してポリープ全体を持ち上げ、そこにスネアをかけて高周波電流を通電して切除します。ポリープがんなどが疑われる場合にはこの方法で一括切除を行います。
20mmを超える大きな病変は、分割切除になってしまうと病変の範囲を正確に診断することが困難になってしまうため、確実な一括切除が必要です。このような場合は粘膜の下に存在する粘膜下層にヒアルロン酸などの薬液を注入し、ポリープのできている層を持ち上げ、専用の電気メスで周辺の粘膜を切開することで病変を少しずつ剥離して切除します。手技的に難易度が高く、出血や穿孔のリスクも高まるため、通常は病院に入院して行います。
こうした内視鏡手術でさまざまなポリープを切除できますが、進行の度合いや切除後の病理診断結果、患者様の既往歴などによっては、外科的手術になることがあります。
良性の腫瘍性ポリープである大腸腺腫は、治療せずに放置すると大腸がんに移行するといわれています。さまざまな報告例がありますが、大きさ10mm未満で15%、10mm以上20mm未満で39%、20mm以上で65.9%といわれています。できてから数日や数週間で大腸がんになるわけではなく、5年から10年かけてゆっくり育ち、やがてがんとなります。
したがって、大腸ポリープを大腸がんになる前に定期的な大腸内視鏡検査で切除することが、最も有効な大腸がんの予防法といえます。健康診断や年齢、気になる症状を機に、定期的に大腸内視鏡検査を受けることをおすすめします。
大腸ポリープ切除をされた方は1~2週間程度、食事制限、生活制限があります。
なお、制限に関してはおおまかな目安であり、遅発性(ポリープ切除してしばらく経ってから)の出血や穿孔のリスクはあります。処置後に気になる症状がありましたら当院にご連絡ください。
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