2024年7月28日
こんにちは。山田です。わたくしの専門分野である大腸癌について詳しく書いてみようと思います。済生会川口総合病院で外科医をしていた頃に患者さんへ説明していた内容をここでも書いてみます。まず大腸癌というのは大まかな名称であり、実際には『結腸癌』と『直腸癌』の2つに大別されます。(ほかに肛門癌なども存在しますが・・)結腸は解剖学的に「盲腸」「上行結腸」「横行結腸」「下行結腸」「S状結腸」に分けられ、結腸癌のなかでの好発部位はS状結腸癌がもっとも多いです。また、患者さんの体からみて右側に存在する「盲腸」「上行結腸」を右側結腸とよび、左側の「下行結腸」「S状結腸」に比べるとその悪性度や予後が悪いということが近年判明してきました。
患者さんがまず大腸癌と告知されて頭をよぎることが大腸癌=人工肛門というイメージではないでしょうか?人工肛門にもさまざまなタイプがあり、適応もいろいろありますが、まず一般的にとらえていただきたいのは人工肛門を念頭におくべき癌は直腸癌であるということです。肛門から触診(直腸診)を行ったとき、指で触知可能な場所にできてしまった癌の場合は腸を切除して吻合(つなぎなおし)をするということが困難になります。このため肛門の皮膚ごとトンネルを掘るように切除してしまい、体の左側に人工肛門を造設する(永久人工肛門)という術式になります。近年では手術手技の向上、手術器械や道具の発達、特に腹腔鏡下手術やロボット支援下手術の普及でひと昔前は永久人工肛門以外に選択肢がなかったものが肛門を温存可能にするような術式も増えてきました。結腸癌の場合には、癌からそれぞれ10㎝離れた場所で腸を切除して吻合をするため肛門から癌までの距離が15㎝程度あるS状結腸癌などでは人工肛門の心配はしなくても大丈夫です。右側結腸の盲腸や上行結腸、横行結腸に進行癌ができた場合はリンパ節を広範に切除する必要があるため右半分の結腸を切除して小腸と残りの結腸を吻合する右半結腸切除術という術式になります。癌のできた部位、術式によりさまざまなパターンがあるためここですべてを説明するのは困難です・・
癌のステージというのはよく耳にされると思いますが、これは癌が腸の壁どこまで到達するか(深達度といいます)とリンパ節への転移があったかどうか、ほかの臓器へ転移しているかどうか(遠隔転移)によって決まります。癌が小さいから早期、大きいから進行癌というわけではありません。 極端な話10㎝の癌であっても腸の粘膜内にとどまっていれば早期癌ですし、5㎜の癌であっても固有筋層という層まで到達してしまうと進行癌になります。まず医者の立場で患者さんには術前に検査を行った画像診断(内視鏡画像、CT画像)から・癌の深達度予測・リンパ節転移の有無予測・遠隔転移の有無 これを鑑みて術前予測のステージを伝えます。最終的には病理診断(病理医が顕微鏡で観察して深達度やリンパ節転移の有無を診断)によりステージが決められます。ステージがⅢ以上と診断された場合(進行癌かつリンパ節転移1個以上あり)では術後の再発予防目的での抗がん剤投与が推奨されます。ただし、すべてステージで抗がん剤を行うわけでもなく、生産年齢である30代~50代のかたにはステージⅡであっても抗がん剤治療をおすすめする場合があります。逆に重篤な基礎疾患をかかえていらっしゃる80代高齢者や腎不全で透析をされていらっしゃる患者さんなどにはステージⅢでも抗がん剤はおすすめしません。
癌の深達度により内視鏡治療で済むのか、手術になるのかなどが決まります。また、手術となった場合は病理診断によるステージがわかり次第経過観察とするか、追加治療をするかなどが決まります。このあたりの事についてはまた今後説明してみようかと思います。説明をさせていただく側として思う事は患者さん自身もすべて医師任せではなく、少しでもよいので知識をつけていただきご自身も納得した治療を医師と決めていく それが重要ではないかと思っております。