2025年8月31日
便潜血検査とは
院長の山田です。開業後長らく投稿をしておりませんでした・・・
今回は当院に検査結果を持参されることが多い便潜血検査について説明してみたいと思います。便潜血検査は健康診断やドックの際に広く用いられている検査方法です。目的は主に大腸の腸管から出血によって便に混入した微量の血液でも検出できるため、大腸がんやポリープの発見に有用です。いわば目に見えない便中の出血を調べる検査です。方法は簡単で、排便後の便を検査容器の先端でこすりとるようにして検体を採取します。1日法と2日法がありますが、2日法で行うことをお勧めします。便潜血反応が陽性と判定された場合には二次検査(精密検査)として大腸内視鏡検査を行うことになります。
便潜血検査には化学的方法と免疫学的方法があり、現在の便潜血検査は免疫学的方法が行われています。これはヒトヘモグロビンに対する抗体を用いて潜血の有無を調べる検査です。食道や胃などの上部消化管からの出血で反応するかどうかですが、胃酸や腸液などの消化液によりヘモグロビンが変性するため便潜血検査は大腸からの出血のみを検出します。
便潜血検査が陽性になる確率は約5~10%、がん発見率は0.10~0.15%です。これは大腸がん検診を1万人の方が受けた時に、500~1000人が便潜血陽性となり、そのうち10~15人が大腸がんと診断される割合です。大腸癌の約30%以上が、この検査をきっかけに発見され、そのうち70%が早期がんです。陽性反応の大半は痔など別の原因によるものである可能性が高いものの、便潜血陽性となった場合は、大腸がんの早期発見・早期治療のためにも必ず大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受ける必要があります。
実際に腸管内に病変が存在しないのに、陽性と判定される場合があります。これを偽陽性といいます。偽陽性と判定される確率は30~40%で、この場合には検査を行っても病変が発見されることはありません。偽陽性の原因としては痔による出血、生理中の出血、検査キットの取り扱い(検体の採取方法や保存方法の不適切さなど)も影響を及ぼすといわれています。大事な1日を大腸内視鏡検査に費やして「何もありませんでした」という結果になった場合はぜひ「よかった」と思うようにしてください。一方で切除可能なポリープが見つかった場合、便潜血陽性の原因ではない病変も多々あります。この場合には「便潜血陽性と判定され、検査をうけるきっかけがあったからこれが見つかってよかった」と思うようにしてください。
便潜血は陰性であっても、完全に病変がないということではありません。進行大腸がんであっても便潜血の陽性率は約70%であり、30%は陰性と判定されます(偽陰性)
まとめ
私は前職が消化器外科医で大腸がんが専門分野でしたので様々な患者さまと接してきました。なかには毎年検診を受診され、便潜血検査をおこなっていたのにもかかわらず陽性とならず偽陰性の状態で進行がんが見つかってしまった患者さん、また毎年便潜血が陽性と判定され要精密検査の結果用紙をもっていながら検査を受けずに放置しており全身検査をしたときには他臓器転移をしていた患者さんなどがいらっしゃいました。
大事なことは1回でも陽性反応がでて要精密検査と判定された場合には受診されてください。生産世代のかたはどうしても仕事を休んで病院に受診するということが難しかったり、検査のために1日潰さなければいけないことが躊躇する原因になってしまいます。
当院では当日にポリープ切除を行うことも可能です。毎週ではありませんが、土日の検査にも対応しておりますので受診されてください。